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4
阿保みたいに口を開けたまま固まったショウは放っておいて、再び視線を彼女の方へ戻した。
彼女は立ち止まると、日差しを手で隠すように空を見上げた。桜の木でも見ているのだろう。それにしても彼女のその仕草はとても絵になる。よく目にする写真集に掲載されるような見栄えであり、見れば見る程整った美貌に俺は酔いしれた。
十秒間見惚れた後、ハッとして我に返った。現実であまり女性を見過ぎると法に触れてしまう事を思い出したら直ぐに正気に戻れた。
ショウの方へ顔を向けると、奴はまだ固まったまま彼女を見つめていた。仕方ない、と思いながら奴の目を覚まさせるために、脳天目掛けてチョップを仕掛けた。
「いてっ!?
何すんだよてめえ!」
「あの子知り合い?」
「は、はあ!?
別に知り合いじゃねえし………」
はいはいわかったわかった。やっぱ好きなんだな、あの子の事が。
別にからかうつもりはなかったが、思っていた以上に奴の反応が面白かったので鎌をかけた質問でもしてみるかと口を開きかけた時、俺達の目の前に影が差し込んだ。誰かいると顔を正面に戻すと、いつの間にか彼女が俺達の目の前で仁王立ちしながら睨んでいた。
やべっ!
咄嗟に顔を伏せても時既に遅し。
「何じろじろ見てるの?」
彼女の透き通った声の中に怒りが込められているが、いかんせん美声であるが故にその声で怒られても怖くはなく、寧ろ体がぞくぞくしてしまう程興奮した。
ほら言わんこっちゃない。じろじろ見過ぎて怪しまれるなら、もっと細心の注意を払って。
「ねえ、聞いてる?
聞こえてるでしょ。あなたに聞いてるんだけど」
えっ、これはまさか、俺に話しかけているのか?
ショウは話にならないと察したのだろう。顔を上げると、彼女の目は俺に向けていた。
うわっ、まずいなこれは。何て謝るべきか………。
気の強そうな女の子に謝罪するには何が一番最適か。
どうしよう。ショウに助け舟を求めようかと思ったけど………。
バカは口を開けた状態でボーッとしながらまだ彼女を見つめている。
これじゃダメだ。何の役にも立たない。
「ねえ、ちょっといい加減にして。質問に答えてくれないなら警察に」
「ご、ごめんなさい!」
痺れを切らす直前だった。とにかくまず謝るべきだと、俺は両手を合わせながら深く頭を下げた。
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