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7
授業を終えるチャイムが校内に鳴り響いた。
やっと終わった………。腹減ったあ、らーめん食いてえ………。
疲れ果てて机に突っ伏した。頭を働かせ過ぎると腹が減るというのは本当のようだ。これはつい最近ネットサーフィンしていた際、偶然そのまとめ記事を見つけて、気が付いたら最後まで読んでいた。
何で今日に限って頭を使う授業ばっかりなんだよ。中島も抜き打ちテストとかやりやがって、そんなに生徒の勉強具合が気になるのか?
生徒をいじめて楽しんでいる教師を思い浮かべたら腹が煮えきり、と同時に猛獣が唸り声を上げたような重低音が腹から鳴り出した。
………マジで腹減った。
周りを見渡せばそれぞれ帰り支度をしている人もいれば、既に教室から出ていく人達も見られた。
こんな所でいつまでもボーッとしてたら日が暮れちまう。さっさと帰ろう。そうだ途中であのらーめん屋にでも寄るか。小遣いまだあるよな。よし、そうと決まればさっそく………。
机のフックにぶら下げていた鞄を持ち、椅子から腰を浮かした。らーめんの事を頭に浮かべたら、重い腰さえ空気のように軽くなった。
らーめんで満たされれば今日の事も忘れられるだろう。
ウキウキで教室から出ていこうとした時、透き通った声が耳に入った。
「ちょっとトオル、聞こえてる?
ねえ、無視しないでよ」
「えっ!?」
頭の中がらーめんの事でいっぱいだったせいで、声をかけられていた事に全く気付かなかった。
目の前に現れた女の子は、色白の小顔にサラッとした艶のある黒のショートヘアー、そしてパッチリとした瞳がチャーミングポイントである、『川島レオ』だった。
「ご、ごめん。今気付いた」
「もー………」
レオは怒って頬を膨らませているが、そこがまたキュートで、本人も気付いていないその愛くるしい見た目に思わず胸がときめきそうになった。
「何か考え事でもしてたの?
あ、どうせまたヤラシイ事でも考えてたんでしょ」
「いや違う、そんな事考えてない!
この後らーめん食べに行きたいなって思ってただけだよ」
「ホントかなあ?」
「ホントだよ。今超絶腹減ってるんだって。ついさっきも腹の音が鳴ってさ」
「ふーん」
軽蔑な眼差しを俺に向けていた。しかしその目付きも俺の心をくすぐり、ときめいている胸が今にも爆発しそうなのでやめてほしい所ではあった。
「ま、まあいいや。そうだ、レオも一緒にらーめん食いに行かない?
行きつけのらーめん屋があるんだけどさ」
「えっ、私?
んー、どうしようかな………」
この流れでレオを食事に誘った俺もたいしたものだろう。ちょっと余裕を取り戻してきたが、誘ったレオはどうも戸惑っているように見えた。
もしかしてらーめん嫌いだったかな。 やっぱり女の子はオシャレでスイーツなカフェが一番いいのかもな。もし誘う相手が男だったら、『らーめんいいね、行こうぜ!』とかほぼ絶対誘いを断らないし。気軽に誘ってみたはいいが、レオは女の子なんだよな。
「うーん、らーめんかあ………」
レオは決断に時間をかけていた。
嫌なら断ってもいいのに、何でそんなに考え込んでるんだろう。
見かねた俺は尋ねてみた。
「そんな考え込まなくても無理なら別に断って」
「いや、行く!」
悩んだ末に出た言葉は、『GO』だった。
「マジで?
ホントにいいの?」
「うん」
「無理しなくてもいいだよ?」
「行けるって言ってるじゃん」
ちょっと怒ってる。
「ごめんわかった。じゃあ、らーめん食いに行こっか!」
「うん!」
こうしてレオと二人きりでらーめん屋へ向かう事となった。まさか本当に彼女が誘いに応じてくれるとは思わなくて正直驚いたが、もう驚きよりも嬉しさの方が増していて、今もの凄く心が躍っている。
………待てよ。俺とレオ二人っきりって事は、もうこれデートじゃないか?
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