猫跳寺

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二  宿の二階にある自室に戻った。一泊二ドルとはいえ、ツインタイプの広々とした部屋だ。一丁前に屋内型のテラスも付いていて、窓から外の風景も堪能できた。ただ一つの難点は、床材だけはしっかりした木を使っているのだが、壁、窓、天井が全て編んだ竹で作られていて、それが様々な方向に歪みまくっているということだった。そのために室内は何とも言えぬ歪な空間を醸し出していた。床の上に直立していても、真っ直ぐ立っている気がしないのだ。酒にでも酔って、この部屋に帰ってくれば、気分が悪くなること請合いだろう。  ガラスの入っていない、竹で編んだだけの観音開きの窓を開け放った。窓枠は誰が見ても平行四辺形に歪んでいるのに、すんなりと開くのが不思議なくらいだ。室内の蒸した空気と、外の冷たく乾いた空気が入り混じっていくのが肌で感じられた。煙草に火をつけ籐でできた椅子に座り、外の風景を眺めた。
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