猫跳寺

4/67
前へ
/67ページ
次へ
 日暮れ前、街のシンボルともいえる木造で屋根付きの小さな橋のたもとで、僕たちは再会した。彼の右肩には相変わらず、その体格に不釣り合いな、小さな水色のリュックがぶら下がっていた。「ミスター!」と、こういう場合たいてい受け身にまわるはずの僕が最初に声を掛けた。自分でも意外な行動だった。僕を認めた彼は、ゆっくりと近づいて来て、夕食がまだなら一緒にどうかと誘ってくれた。もちろん異存はなかった。  僕たちは近くにあった薄暗い食堂に入り、それぞれフライドライスを一つずつオーダーした。僕はチキン入りで、彼は野菜のみのフライドライスだった。 「これが一番無難な料理だからね」
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加