猫跳寺

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 その時僕は一瞬、相槌を打つのをためらい、何かを言おうとした。しかし、それは上手く言葉にならず、曖昧に笑ってごまかすのが精一杯だった。その後、お互いのフライドライスが無くなるまで、僕たちは暗い灯の下で旅の思い出話や情報交換を続けた。予想していた通り、彼は僕とほぼ同じコースをたどって旅をしているようだった。最後に彼は、まだ見ぬ猫跳寺の素晴らしさを執拗に力説した。 「猫跳寺はファンタスティックな場所なんだ。僧侶が合図をすれば、お寺中にいる猫が一斉に跳ね始めるんだよ。君もきっと、あそこで良い写真が撮れると思うよ。本当にファンタスティックなんだから・・・」  夢に描いた場所とは言え、実際に現地に行ったことのない彼に、そんなことを言われても、正直困ってしまうのだが、余りにも真顔で語る彼を見ていると、僕は何となく微笑ましい気分になった。 「そう願いたいたいですね・・・」
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