最後の地権者

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最後の地権者/その9 アキラ この時もオレはそのストーリーをなぞった 建田さんが言った状況になった時点で、泉家へ足を運んだ ピンポン鳴らし、少しして、典子さんが出た 「雪かき、適当にやっときますよ。スコップあるんで」 オレはちょっとぶしつけ気味に、しかし、さらりと言った しばらくして、典子さんもチリ取りもって出てきた 「すいません、私もこれでやるわ」 なにしろ、この辺では何年も積雪は皆無だった なので、雪かき用のスコップなど、備えていない家が多い まして、この家は70代と40代の女性二人暮らしだ 1時間弱、寒い中、二人は無言で汗流しながら、雪かきを終えた ... 額の汗ぬぐいながら、息も荒い典子さんが話しかけてきた 「ちょっと、中入って」 大みそかに寿司を食べた、あの居間に再びお邪魔だ 「今日は親切にありがとう。まさかこんな大雪、予想してなかったから。助かったわ」 台所にはお母さんらしき人が、何やら調理してる 「いま、お母さんがおしるこ温めてるから…、あ、今タオル持ってくるわね」 オレは差出されたタオルを受け取って、汗を拭いた 建田さんのレクチャーでは、お母さんとまずは世間話だ なにしろ、ここの土地と家はお母さんの名義だし ... 泉さんのお母さんは、おしるこの鍋を持って居間に運んできた 「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」 両手をついて、挨拶されちゃった さすが、この年代の人は年下にもこうする、立派だな 思わずオレもソファから降り、同じように新年のあいさつをした 「この人、アソコのライブハウスで楽器弾いてる人なんだけど、雪かきやってくれたのよ」 「それは、ご親切に。ほんとに…、うっうっ…」 お母さん、なんか嗚咽状態になっちゃった 典子さん、人前でみっともないとか、結構きついこと言ってる… お母さんは、要は父親をに早くに亡くし、典子さんが不憫だと そして、周りに誰もいなくなってまで、ここに住んでるのは辛いとか… 結構ハッキリ話していた オレはあったかいおしるこに舌鼓を打ちながら、聞き役に徹した 「ごめんなさいね。年寄りもこういう状況だと、ストレスたまるのよ、ハハハ…」 典子さんはどっしりとしたもんだ 「ここの地所の件は、娘に任せてますんで。面倒おかけします」 お母さんはそう言って、自室に戻った 事務的に考えれば、今の時点で、立ち退きは地権者も自覚してて、決断は典子さんに一任してるということだ 「あなた、建田からいろいろ言われてるんでしょ。早く説得しろとか、せかされてるんじゃないの?」 「あの、オレ、この前言った通り、組のもんじゃないんで。ただ、”特殊”なポジションなんですよ、”今は”。だから、オーナーからは交渉の窓口に思われてます。その話になっても、僕が受け皿です、一応」 ここで、自分の立場を明確にしておいた 典子さんは、おしるこすすりながら、頷いてる ... 帰り際、典子さんは俺に言った 「今週の金曜日、来られる?」 「何時ですか?」 「夕方、6時過ぎどう?」 「大丈夫です」 「じゃあ、来て、一人でよ。それなりの話ししましょ、そろそろ。でも、まだ建田とかには言わないでおいて」 「わかりました。言いません」 そのあと、改めて今日のお礼を言われ、オレはおしるこのお礼を言ってマッドハウスに戻った
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