最後の地権者

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最後の地権者/その10 アキラ オレの中では、泉典子さんとの本格的な折衝が始まった とは言え、建田さんには”その段階”とまでは話していない ますは、オレはただ話を聞く、これが基本だろう 根気は必要だが、ある意味、気楽だ 典子さんはとにかく相和会について、詳しく調べたらしい 今回の立退き交渉の相手がその筋だといことで… 典子さん、オレが知らないこといっぱい知ってた ... 「会長の相馬豹一というのは、それは恐ろしい人だったそうよ」 泉さんは、関東と関西の広域組織に屈しなかった、相馬会長の武勇伝を話してくれた 関西への橋渡しで、相和会内部の人間が裏切り行為をしようとしたときのことだ その組員が、仲介人と会う情報を相和会が掴んだんだけど… で、その場を抑えて、”然るべき対処”をという方針になった 普通に考えれば、誰か”適任”を選んで行かせるだろう だが、なんと相和会のトップ自らが日本刀持って、そこに乗り込んじゃった それで、そこにいる人間、すべて殺そうと思ってたらしい しかも、そのことは組の誰にも内緒で、いきなり… それを今の幹部の矢島さんらが、後をつけて命がけで制止したと 相和会からすれば、会長に直接手を出されたんじゃ、たまんない 組が吹っ飛ぶようなもんだし… 相馬さんは年中こんな調子だったから、幹部たちは自分の会長を監視までしてたみたいだ 相馬さんの行動原則は、自分の組を守るとかいうのは二の次で、 目の前の敵や裏切り者を叩き潰す… まあ、いたって単純だったみたいだ オレなんかが聞くと、会長がそんななら相和会なんてとっくに、広域組織に潰されてるんじゃないかと思う訳なんだが… ところが、広域組織からすると、考えられないような行動をとる相馬さんにやたら手を出せば面倒だという心理作用が働くらしい 要は自分たちのセオリーが通じない相手には、計算して物事を進められないということで ”力の世界”の組織心理というのは、そういうものなのかな ... そういった相手側の心理状態を読んで、周りの幹部が会長の”異常行動”を逆利用していったという こんな組、日本中、見渡してもめったにないということで、やがてその世界では、カリスマ的に捉えらるようになったという そんな”特異”なポジションを確立した相和会は、政治家や警察との関係も特殊なんだとか どこでも見られるような、通常のもたれあいではなく、特に県警は広域組織を阻止し続けてきた相和会を重用視しているという そんな”特別な関係”を、ある雑誌社がスッパ抜こうとしたことがあったという 「週間実話キャッチ」だそうだ、そこが出してる雑誌 オレも知ってるわ…、だってこの週刊誌、”例の件”を記事にしたとこだもん 典子さん、色仕掛けの内幕をここにリークしたんだそうだ
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