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「さくっ!!」
うん……?
未だ落ち着かない自分の呼吸音に交じって、声が聞こえる。
幻聴かな……?
ふわふわしたところにいた僕は、強く抱きしめられて現実に引き戻された。
その瞬間、感じる。
何度も嗅いだことのある、洗剤のにおい。
何度も感じたことのある、体温。
「ゆ、ぅ……?」
「そうだよ、さく。大丈夫。落ち着いて」
背中に回された手で、背中をぽんぽんと叩かれる。
そこで、母さんと咲妃が部屋を出ていたことに気付く。
「なんで、ここに悠が……はぁ、はぁっ……夢……?」
「夢じゃないよ。咲妃ちゃんに呼ばれてきた。……大丈夫だよ、さく。何があったかは後から聞くけど、俺はさくの味方だから安心してね」
悠は、甘く優しい声色で話す。
背中をさすり、片手で僕の後頭部を支えてもっと強く抱きしめられる。
……味方、なんて。
話を聞かないと分からないのに。
でも、何故か悠の言葉に安心できた、。
今まで出なかった涙が、せきをきったように溢れ出す。
乱れていた呼吸も、戻りかけていた。
「……ふぇ、……ううー…」
悠の肩に顔を押し付けて、声を我慢して泣く。
「うっ、うぅ、……」
「大丈夫大丈夫、さくには俺がいる」
結局、顔が鼻水でぐしゃぐしゃになり、目が腫れるまで泣き続けた。
さく。大丈夫だよ。
もう少しだけ待っててね。
あともう少しで、________。
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