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※暗い話注意※
その日の夜、俺はサイレンの音で目を覚ました。
「……っんだよ、騒がしい………」
ドンドンドン!!
「おわ、何?」
ガチャ!
「あああアンタ!あの子の家が……!」
「………は?」
アイツの家が、燃えた。
急いで駆けつけると、轟々と燃えるアイツの家。
『通ります!道を開けて下さい!』
まさか、
「っ、!」
丁度、アイツが救急隊員に運ばれて車に乗せられるところだった。
「お、おい!しっかりしろ!」
『大丈夫です!息はある!急いで病院まで行くので、どいて下さい!』
そうか、まだ、助かる。
ペコリ、と頭を下げた隊員は救急車にのりこみ、走らせる。
だんだんと遠ざかっていく救急車。
ただそれが、なぜだかアイツと会えなくなるような気がしてならなかった。
『可哀想ね……親が眼の前で燃えてる中、ずっと叫んでたそうよ……』
『旦那さんの体が急に発火したそうよ……何か、前にテレビで見たことあるけど、原因不明の怪奇現象って言ってたわ……』
『そうなの?可哀想だけど、ちょっと気味が悪いわね………』
なんだよ、それ。
どうしてアイツがそんな目に遭わなきゃならないんだよ。
「………帰ろう」
「………………」
「あの子が帰ってきた時にアンタが元気じゃなくちゃ、どうすんだよ………」
「………………」
その後、俺は狂ったように勉強にうち込んだ。
もちろん、世界の超常現象についても、化学的に、生物学的に。
そして2ヶ月後、アイツは目を覚まし、俺は大学に受かった。
ただ、俺はアイツに会いに行けなかった。
家族でも、恋人でも何でもない俺は、病院側から面会を拒否された。
写真を見せても、母と行っても怪しいくらい頑なに面会を拒否され続けた。
しまいには、医師の休憩を狙って問い詰めた。そこでようやく、俺はアイツに可笑しなくらい執着していた事に気がついた。
「………何で俺とアイツの面会を許可しない………?」
「……君だからだよ」
「答えになってない」
「………私はもう引退するから良いか……。あのなぁ若造、記憶喪失というのを知っているか?まぁ、知っているだろうなぁ」
「まさか、」
「あぁ。彼女はソレなんだが、目を覚ました後、彼女は『自分が今まで覚えていたもの』を示されると、強く拒絶反応を起こすんだよ……」
「…………」
「治療には、時間しか手段のない、厄介なものなんだ」
「………………」
「……頼む。彼女を心配する気持ちは分かるが、そっとしておいてあげたらどうかね」
「俺は、」
俺は、アイツの特別で。
いや、俺の特別が、アイツなんだ。
「とく、べつ…………」
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