魔王決定戦‥‥よりだいぶ前

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魔王決定戦‥‥よりだいぶ前

「‥‥‥やっと来たわね‥」 「やっぱついてたか、エネ」 「ええ。本家の奴らがあまりにもうるさくてね。‥‥‥半分アンタのせいでもあるのだけれど」 「んなもんオレに言われてもなぁ、」 オレとエネは双子であり、一応魔王の血筋の魔族だ。 見た目はエネは何か真っ白って感じだが、オレの肌はそこまで。何なら黒い角が生えているし、明らかに魔族の、高位の者だと分かる。 まぁ、角が邪魔だから魔法で消してる約2名の元側近はいるが。 そしてオレは分家の血筋ながら、前魔王と同じ金色の瞳を片方有している。 いわゆる、隔世遺伝。 本家の方にはこの金色の瞳を持った者が産まれなかったからか、こうして分家のオレたちをわざわざ呼びつけたってわけだ。 「はぁ‥‥‥」 「お前が何考えるてるか当てようか?」 「‥‥好きにしたら」 「まずは面倒くさい早く帰りたいだろ?」 「‥‥‥」 「んで次がアイツのことだなー」 「‥‥‥‥」 「んで最後にお腹が‥‥‥」 「失礼ね。ま、双子なだけあって全部当たってはいるわ」 「ま、そーだよな。てか、最後のやつはアイツの事考えたからお腹減ったんだろ」 「‥‥私をアンタと同じ『魔力食らい』と一緒にしないでもらえる?」 「はっ、同じだとは言ってねぇだろ」 ま、オレはそうだけど。 アイツの魔力は美味かったなぁ〜。 今までの中でダントツ。ま、すぐに引っ込められたからもう食えねぇかもだけど。 「来たか!ノーイ」 「‥‥‥おー、何十年ぶりですね、おじさん」 「んん、まぁ良いだろう。奥に向かえ。皆が待っている」 んな堅苦しいのは嫌だって、何回言えば良いのやら。 ま、促された通りにエネとオレは通路の奥にあるデカい部屋に向かった。 「‥‥‥‥ノーイにエネ。よくぞ来た」 「‥‥‥お久しぶりです」 「座るぜ。お前らも立ちっぱなしはなんだろ。オレは堅苦しいのは嫌いなんだ」 「‥‥‥‥‥随分と偉くなられたようで」 「は?知らねぇよ。オレは元々こうだ。畏まってんのはお前らの方だろ」 「‥‥‥‥‥」 ま、こんなピリついた空気のまま『魔王決定戦』についての会議が始まった。 「‥‥でだな、やはりウチの血筋であるお前に魔王となる資格が‥‥‥」 「あのなぁ、言っとくけど、オレが前魔王の側近たちより強い確証はないぜ?」 「いやしかし、血統的に‥‥‥」 「血、血って、本当そればっかだな。そんなに地位が大切かよ?」 「‥‥っ!」 「‥‥ま、そうでしょうね。私たち分家には黙って美味しい蜜だけ吸ってきた貴方たちですもの」 「今まであったものが無くなるからって、急にオレらに媚びへつらいやがって」 「‥‥‥言葉は慎重に選んだほうが良いぞ」 「あぁ?それはどっちがだよ。今オレが『コイツ』を使ってお前らの存在ごと消してやってもいいんだぜ?」 「‥‥‥っ」 「魔王は力が強くてなんぼだろ。オレは、側近たちとも新勢力とも戦うぜ」 「‥‥‥ならば1つだけ忠告をしよう」 「はっ、忠告ねぇ」 「‥‥前魔王の側近2名が従える人間がおるのは知っているか?」 「‥‥‥‥」 2名が従えるっつうか、2名を従えてるってのが正しいな。 「ソヤツは人間にしては、凄まじい力を秘めておる。しかしどうだ、蓋を開ければ所詮ただの人間。種族的に我らの方が優位である。側近2名の援助をさせないよう見張るのだな‥‥‥決して、その人間には負けぬように」 「‥‥‥お、そうだ。良いこと考えた」 「‥‥‥偶然ね、私もよ」 「何、申してみよ」 「その人間、アイリっつう名前なんだけど。‥‥‥オレは一回、『コイツ』を持ってしてもアイツに負けた事がある」 「な‥なんだと!?」 「お前は『人間に側近2名の援助をさせるな』つったよな?」 「ええ、私はそう聞いたわ」 「だよな。だから、『その人間を魔王候補として魔王決定戦に参加させる』っていうのはどうだ?」 「なっ、何をぬかしておる!人間になど、その権利を与えるに相応しくない‥!」 「は?お前が『人間は種族的に弱い』って言ってたんだから、こんくらい大した話じゃないだろ?なんだよ、人間に負けるのが怖いのか?なっさけないなぁ」 「うううるさいっ!黙らんか!人間が魔王になど、あってはならんのだ!過去にだってそんな歴史は‥‥‥」 「ま、過去にはねぇだろうな。でもな、オレは感じてんだよ」 「‥‥‥‥‥」 「アイツは魔王の『生まれ変わり』だってな」 「そ、そんなことが‥あって良いはずが‥‥‥」 「まぁ取り敢えずそういう事で。帰るぜエネ」 「‥‥‥言われなくても」 ま、後半はテキトーだ。 オレがアイツと戦いたいからそういう流れにしたんだがな。 「‥‥‥‥アンタ、もしアイリと戦うなら、コレを持ちなさい」 「んだそれ、オレはそんな小道具‥‥‥」 「これは1度だけ即死を免れる宝玉。‥‥‥もしなにかあった場合に、持ってなさい」 「‥‥あぁ、ソイツは持っといたほうが良さそうだな。オレはまだ『アイツの料理』を食べたことないんだ。殺されちゃ堪んねぇよ」 「‥‥私はもう行くわ」 「おっ!そうだ。お礼も兼ねて‥‥プレゼントだ‥‥ぜっ!!!」 そして思いっきりエネの足を掴んで投げ飛ばす。 「なっ!‥‥‥覚えてなさいっ!」 「へっ、この前のお返しだぜ。よくもまぁ抜け駆けしてくれたよな!」 前は急にテレポートさせられて大変だったなぁ。 「‥へっ、いい気味だぜ」 昔から続く姉弟ゲンカも、もはやもう勝ち負けは先に出し抜いた方が、という理解になってきている。 「ま、アイツも魔王の端くれ。平気だろ」 オレはケンカで勝ったこと無いけどな。 そんでもってこの次の百倍くらいに膨れ上がった報復も怖いけどな。
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