兄と俺と義妹

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兄と俺と義妹

 俺は兄貴が嫌いだ。  頭が良い兄貴が、誰にでも優しい兄貴が、両親に愛される兄貴が、  ――俺を女のように扱い犯してくる兄貴が、嫌いだ。  「ふ...く、んん...ぁっ」  「渉(ワタル)...愛してるよ渉...僕だけだ、渉を理解してあげられるのは」  手首を布で縛られた状態でうつ伏せにされ、後ろから激しく熱い昂りを打ちつけられる。  兄貴は俺の腰だけを高く持ち上げ、一回一回俺の中を犯すたびに耳元に吐息をこぼす。  「渉...渉渉、渉っ」  「あ...あ゛ぁっ、くっ」  速くなる律動の後に奥深くで感じる、兄貴のものから吐きだされた熱。  前を上下に擦られていた俺はそれと同時に欲を吐きだした。  習慣になりつつあるこの行為。どんなに俺が嫌がり、抵抗しても無理矢理犯られる。  平均以上ある高い身長、女っ気のない顔。そしてケンカばかりして不良と呼ばれるようになった...この俺に兄貴は愛していると愛を囁いてくる。  実の弟である俺に異常な執着を見せ、独占しようとしてくる兄貴が気持ち悪くて 俺は兄貴の目を盗んでは毎夜、夜の街へと足を踏み入れケンカばかりを起こしていた。  唯一人を傷つけている時が、俺の心が休まるときだった。  兄にぶつけるべき怒りを他人にぶつけては心を高ぶらせる毎日。  そんな俺のことを当然のごとく両親は見捨てた。 礼儀正しく、勉強も運動も何でもできる兄がいるんだ。出来も悪く、ケンカばかりしている俺にはもう期待も何もないだろう。  母親似で女顔の兄貴は女はもちろんのこと男にもモテていた。  父親似の俺は兄貴とは真逆で、きれいとは程遠い顔立ち。しかし、父の彫りが深い造形や切れ長の目が似たおかげで、中性的な顔立ちでは決してないが女にはモテていた。  もちろん、男にはそういう対象に見られたことはないと思う。  だが、俺に近寄ってくる奴は全員完璧な兄を持つ俺に変な期待を持ち、それを押し付けてきた。  兄と俺を比べては失望する周りの目。俺を犯す、欲に塗れた兄の目。  もう、嫌だった...比べられるのが、女のように性欲処理に使われるのが、  心身ともに疲れ果て、全てに対して投げやりになっていた。  ――そんな時、  「こんにちわ。これからお世話になります、ひよりです」  俺に、義妹ができた。  俺と兄貴の義妹となったひよりは先月病死した使用人の子供だった。  行く宛てもなく、路頭に迷おうとしていたひよりを両親は養子にしたのだった。  もちろん、それは家の評判を上げるために。  だが、それでも初めて俺は両親に感謝した。  なぜなら、ひよりに出会ったことによって――俺は再び感情が強く蠢くのを、感じることができたのだから。  栗色の柔らかな長髪、白い肌に映えるほんのりと赤い唇。長いまつげに縁取られた二重の瞳。華奢で背の低い小さな身体。  ひよりは俺が今まで見てきた中で、一番可愛らしい容姿で俗に言う美少女。 笑った顔は花のようにきれいだった。  そんなひよりに俺は、一目惚れした。  一瞬のうちに顔が熱くなるのを感じた。今までにないほど、心臓がうるさく高鳴った。  そして兄貴は俺のひよりに対する愛情を目敏く察し、前以上に俺を独占しようとしてきた。
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