約束の花いちもんめ

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約束の花いちもんめ

「どざえもんってママが言ってた」 「え? それってポケットから色んな道具を出せる…」 「違うよぉ! 水におぼれて死んじゃったヒトって言ってた」 「え? こわい〜……」 「ねぇ! それより、もう昼休みだよ! 運動場、行こうよ!」 なつは(まい)の弾んだ声を聞いて、椅子から立ち上がった。 「早く、早くっ!」 「舞っ! 待ってよ〜」  なつは教室から飛び出した舞の背中を追いかけた。  舞、なつに続いて、5年3組と表示された教室から、生徒達が次々に吐き出される。廊下に、子供達のきゃあきゃあと解放された声が響いた。 「今日、何する〜?」 なつの後ろを走っていた佳乃(かの)が声を出した。 「おにごっこがいいんじゃない?」なつが言った。 「花いちもんめにしようよ〜」続いて舞が言った。 「そうだねぇ、花いちもんめにしようっ!」 佳乃が返事をして、舞が「そうしよう!」と弾んだ声で同意をした。  なつは、まただ、と思いながらも、ぎこちない笑顔を浮かべて、 「りょうかい!」と返事をした。 (花いちもんめは好きじゃないのに)  なつは夏休み前から5年3組で流行り始めた「花いちもんめ」があまり好きではなかった。  この遊びはまず、1組2〜5人、2組に分かれる。  それぞれの組は手を繋いで1列に並んで向かい合う。2組のリーダーを決めて、ジャンケンを行う。  ジャンケンで勝った方から「か〜ってうれしいはないちもんめ♪」と歌い始め、歌いながら前に進み、「め♪」の部分で片足を軽くあげる。向かい合っている相手の組は後ずさりをする。  今度は負けた組みが「まけ〜てくやしいはないちもんめ♪」と歌って前に進む。 そのあとに、 「タ〜ンス長持ち、あの子がほしいっ」 「あの子じゃわからん」 「相談しましょ」 「そうしましょっ♪」 を、交互に歌いながら、前後に歩く。  歌が終わるとそれぞれの組で相談して、相手の組から誰を自分の組にもらうか決める。  決まった組から「き〜まった」と叫んで、それぞれの組で1列に並び、手を繋ぐ。  そして、また向かい合い「〇〇ちゃんがほしい」と前に進みながらメンバーの取り合いを行う。組の代表者がジャンケンをして、勝った組に呼ばれたメンバーが加わる。  片方の組からメンバーがいなくなれば遊びはそこで終了となる。
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