義兄弟

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俺はすぐその場を立ち去った。 家に帰ってすぐ自分の部屋にこもり、布団をかぶる。 俺の頭は混乱していた。 どういうことだ? 俺の方が可愛いから君とは付き合えない? 何言ってんだ? ぐるぐる考える俺。 その時、部屋の扉がノックされた。 「冴」 兄貴だった。 「……なに」 「入っていい?」 控えめに聞いてくる兄貴。 正直今は会いたくない。 「だめ」 といったのに勝手に入ってきてた兄貴。 「なんで入ってきてんだよ」 「……」 兄貴は俺の質問に答えない。 「おい!聞いてんのか!!」 「冴」 兄貴は俺をじっと見つめた。 「な、なんだよ……」 体が少しあとずさる。 俺の本能が、『兄貴に近づくな』と告げている。 「俺は、冴が好きだよ」 まるで愛しいものを見つめるかのように、柔らかく瞳を細めて兄貴が言う。 言葉が出ない俺。 「さっき告白されてるの、見てたでしょ?」 「……!」 「俺が断るときに言った言葉も。そのまんまの意味だよ。俺は冴が大切だから、恋人を作る気は無い」 「い、いみわかんね……」 目線をそらす。目を合わせられなかった。 「いいよ、今は」 兄貴が俺に近づき、ぎゅっと抱きしめる。 「冴が世界一可愛いから。俺が恋人を作らないのは冴のせいだよーっ!!」 そう言って俺から体を離して見つめてくる兄貴には、さっきまでの真剣さはなくて。 そんな姿にちょっと安心しながらも兄貴から距離をとろうとする。 「はなれろっ、て!」 だが兄貴はぴくりともしない。 なんだこの馬鹿力。 「ふふー、冴は力が弱いね?」 またぎゅーっ、といいながら抱きつく兄貴を全力で剥がしにかかる。 「おいっ!……って、匂い嗅ぐなあ!」 「なんでー?いー匂いなのにー」 すんすんする兄貴に鳥肌がたつ。 「いーからはなれろーーー!!!」 それから、もっと兄貴が俺に構うようになったのは言うまでもない。
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