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フラグたってないから(怒)
朝食を食べ、家を出る。
「いってきます」
「いってきまーす」
兄貴と俺は同じ高校に通っているので、登校がどうしてもかぶる。
いや、俺は時間をずらそうとしたんだけど、しつこく兄貴が一緒に登校しようとしてきたから。
俺は断る気力もなくし、何も考えないようにした。
俺が断れば断るほど、構われていると誤解する兄貴に疲れたのだ。
「冴、今日は体育でサッカーなんだろ?サッカー部の冴なら活躍間違いなしだなっ!」
るんるんで話しかけてくる兄貴。
てか何で学年離れてるのに今日の授業内容知ってんだよ。
「昨日は二時間目でもう居眠りしてただろー?今日はちゃんど授業受けような」
待て待て。
「え、なんで知ってんの…」
俺は今すごい引いてる顔になってると思う。
そんな俺に兄貴はドヤ顔で言った。
「お兄ちゃん、昨日二時間目体育で外にいたの。で、冴の教室見上げたら、こっくりこっくりしてる冴が目に入っただけ。いやー可愛かったなぁ……」
恍惚とした表情で語った兄貴に俺は引くばかり。
くそっ、窓際の席、気に入ってるのにそれが仇になったなんて。
「兄貴だって授業中に教室見上げんなよ。真面目に授業受けろよ人のこと言えねーじゃん」
「いや、そんときお兄ちゃん試合なくて他の試合見てる時間だったから。別によくない?」
……ちっ。
「ああん待って、何で先に行こうとするの、冴のいじわるー」
何が『いじわる』だ、こんな変な奴とながながと登校する気はない。
俺が大股でどしどしと早歩きするも、足の長い兄貴にすぐ追いつかれてしまった。
「まってってば、さ」
「「「あー、凪沢くぅん!!!」」」
兄貴が俺の腕をとろうとした瞬間に、耳をつんざくような高い声が通学路に響いた。
びっくりして振り返ると、三年の女の先輩たち。
数人の女子はすぐに兄貴を取り囲んでしまった。
「おはよお、凪沢くん」
「あ、うん、おはよ……」
「やーん、登校中に会えるとか幸せー」
「ね、ね、一緒にがっこ行こ?」
「申し訳ないけど、僕は弟と……」
兄貴が隣にいる俺に目をやる。
先輩たちは、そこで初めて俺がいたことに気づいたようだった。
「え、凪沢くんの弟?」
「わぁ、なんか似てない!」
うるせえ!!!
美形じゃなくて悪かったな!!!!!!!
俺は学校へ走り出した。
兄貴と、さらに兄貴の取り巻きと登校なんざしたくない。
「まって、冴!」
兄貴が俺を呼ぶ声が聞こえるが、振り向かず、登校中の生徒を全速力で追い越していく。
仲良く女の子たちとキャッキャウフフしながらゆっくり優雅に登校するがいいさ。
そして遅刻しろ!!!!!!!!
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