無用の用途

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 そして危険だとか素人にやらせるべきではないという批判がもうもうと煙を上げ、同時に宿題や仕事の一部を当人がやらないことに目くじらを立てる人間が出てきた。  電話は良くて対面はダメ。宿題はダメで仕事はいい。お金を払えば正当な対価で、添削だけならアイディアだけなら。様々な意見が飛び交って場が荒れて、一時は出品自体の自粛や制限が起こった。  しかしやはり現代人にとって、これは必要だったのだ。  結局AI台頭の余波もあって賛成派の意見が盛り上がり、反対派を押さえる折衷案のようにこの専用ページが作られた。  当初は独占市場なんていう批判もあったが、高額な利用料や手数料を取ることもない。安くて安全、が保障されていると分かって、そういう声も次第になくなった。  アカウントは一人一つ。事前に個人情報の登録や身分証の提示が必須。  個人で売買を楽しむ分には何の問題もない。宿題や課題にそのまま転用されないように、可能性のある商品は細かくチェックし完成品は売らせず、このサイト上だけでデータをやりとりさせる。ハードなものは郵送時にこの会社を仲介し、検品する。  規約にも記されたそれを守りさえすれば、自由なネットショッピングが楽しめる。やり取りした商品の詳細を世間に知られることもない。でももし破ったら――という仕組みが機能している。  どうせ適当に設定されたコンピューターが適当にパトロールしているのだろうと思っている人間も大勢いるらしいが(あちこちで書き込まれた声を見ればすぐに分かる)、そんなことはないのだ。  意外と労力がかかっていることを彼らは知らない。
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