無用の用途

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 お悩み相談、お話聞きます。○○について語れます、○○のやり方教えます。掃除を、料理を、日曜大工を。作文を、工作を、絵を、写真を――。  自らが作り上げた機械やロボット、AIによって、人間の作業効率はぐっと上がった。人間がいなくてもできる仕事が増えた。  それを仕事が奪われたと見るのか、新たなステージに行くためのサポートをしてくれていると見るのか。捉え方は人それぞれだろう。  それはさておき、今のところはロボットだろうがAIだろうが対応しきれない分野がある。  仕事がなくなった人、収入が減った人。特技を仕事にしたい人。小遣い稼ぎをしたい人。その他、僕には想像もできないほど、人の数だけ事情はあるのだろう。  そういう人たちのために、ショッピングサイトの中にこのページが作られた。  もの(・・)ではなく、こと(・・)を売る場所。   ここに出品された数々の商品は、人間が人間たる証でもある。  僕は刻々と変わっていく画面を眺めて、今日も今日とて、売り手と買い手の仲介作業やパトロールに勤しんでいた。  僕の仕事はここの管理だ。  こういう商品は、数が少ない頃はまだよかった。知る人ぞ知る、というような規模だった頃は、色んなサイトでそれぞれが売買をしていた。  けれど今、合法的な場はここだけ。  使用する人間が増えるにつれて個人情報が漏れたり犯罪が起こったり、教育機関やこれを必要としない人間たちにまで、こういうものの存在が知れ渡るようになってしまったのだ。
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