プロローグ

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プロローグ

「おい、いつまでくっついてるんだよ?」 「ダーメ!啓ちゃん可愛いから抱きつきたくなるんだもん」 「恥ずかしいんだけど?」 「見せつけちゃえば?」 「ん?それとも…… 啓ちゃんムラムラしてきちゃったのかなぁ? いけないんだぁ」 「ムラムラしてんのは柚の方だろ?」 「うーん、そうかも!」 珍しく朝早く登校してきた俺たちはそんな恥ずかしい会話をしていた。 俺の高校の美少女「朝日奈 柚(あさひな ゆず)」が俺にこんなに好意を寄せていたなんて入学したての俺にはわからなかった。 俺の顔が女みたいだからって珍しくて興味を持っていただけだと思っていた。 「ああん、もう誰か来ちゃったみたいね」 それを聞いた俺は柚からパッと離れた。 「むぅー!せっかく啓ちゃんに私を抱きしめさせてあげたのに離れるなんていい度胸ね!」 「お前が勝手にくっついてくるんだろいつも」 「いいもんね!そんな事言うなら私に触るのお預けね!」 「そう言ってお前いつも自分からくっついてくるじゃねぇかよ……」 綺麗な長い茶色い髪をくるくると指に巻きつかせながら柚は色っぽく俺を誘惑しようとしてきた。 「んっ!」 「なんだよ?」 「啓ちゃんチュー!」 「するかよ!」 すると俺のクラスにもようやく人が入り始めた。 「ほうら、啓ちゃんが意気地なしのせいでもう来ちゃったじゃない」 小声で柚は言う。 「お預け言ってたくせにすぐ自分から破りやがった奴がよく言うわ」 そうして教室に活気が出始めた頃俺は窓に目をやる。 俺はこいつの事が好きではなかった。だからこんな風になるなんて思わなかったな。 俺は懐かしむように思い出した。
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