人狼椅子取りゲーム

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 果たしてどちらの霊能が本物か?正確には、霊能の内訳が真狂か真狼かを考えた上で、一体誰を吊るのかどうか。占い三人の誰が真であったのかは、データだけでは村にはわからないのだ。つまり、誰の占い結果もそのままでは信用できないのである――決め打ち、ということをしない限りは。 ――ここで私が相手の霊能に殴り勝って、正しい吊り先を提示できなければ、負ける!  私はウサギのアバターの下で、懸命にカメを睨みつけた。最後の勝負がウサギとカメだなんて、まるで絵本のようではないか。  しかし自分は、あの童話のウサギのように慢心するつもりはない。そして、負けてやるつもりも全くない。 「それでは私から、内訳を主張させていただきますね」  霊能者の偽物であるカメは丁寧な口調で、嫌味ったらしく話し始める。 「まず私の内訳。私の視点では霊能結果、占い師さんのうちニワトリさんが白。他の占い師さんに黒が出ました。つまり占い三人の内訳はニワトリさん真、イヌさんライオンさんが狼、そして私の対抗であるウサギさんが狂人で確定しているというわけです」 「それで?」 「一人しか出ていないネズミさんは、真猫で確定でございましょう。そもそも人外全露出になってしまう状況で、猫又さんに対抗を出す余力が人外にあったはずもない。霊能に対抗として出るのが狂人である可能性が高いとはいえ、狼二騙りというのはなかなかリスキーな戦法。私が偽占い師なら、こんな偏った騙りをあえて主張する必要などございません。それをわざわざ言うのは、私が真霊能であるからに他なりませんね!」  そこそこ人狼に慣れているらしきカメは、恭しくおじぎをしてみせる。 「そして、私の視点ではLW(ラストウルフのこと。最後に残った人狼を刺す)も確定しております。ゴリラさんです。生き残った最後の役職外は、ネコさん。しかしネコさんは、私視点真視点でのニワトリさんに白を貰っておりますから、狼だけはありえません。よって、残るはゴリラさんしかないというわけですね。ゴリラさんを吊って、村の勝利は確実なものとなりましょう!」  演技なのやら、素なのやら。老人じみた外見のカメに似つかわしい、じつに慇懃無礼な喋り方である。  霊能同士の殴り合いは、相手のアラを見つけることが難しい。占い師と違って“ここを占うのはおかしい!占い理由が薄い!”みたいな指摘ができないからだ。  だが。 ――ばーか。  私はすでに見つけている。カメが大きく開けてしまった大穴に。 「じゃあ、遠慮なく殴らせてもらろうか、カメさんよ」 「どうぞ、ウサギさん。ウサギはカメに敗北するもの、と絵本では決まってますがね?」 「そうだな。でも残念、私はそんな間抜けじゃない。今からそれを証明してやるよ!」  言葉の剣で切りつけ、同じく言葉の盾で守る。このカメに恨みはないし、カメと同じ人狼陣営にも恨みはないけれど。今は、全力で殴らせてもらおう――生き残りを賭けて。
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