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人狼椅子取りゲーム
「まあ、この展開は予想通りと言えば予想通りか」
私は仁王立ちして相手を見つめた。
VR空間、人狼ターミナルネオ。ここでは全員が、仮想の姿を与えられている。
“汝は人狼なりや?”。人々の間で幅広く楽しまれているこのゲームは、いまやVR空間で遠くの人と“対面”対戦ができるまでとなった。夜時間のあいだは全員別空間に飛ばされるので、相手の陣営がメタでバレる心配もない。アバターを用いているので自分の身元が相手にバレる心配もないというわけだ。
私もまたそこに参加する一人。ウサギのアバターを付与されているので、名前は“ウサギ”になっているし、周りの人間にも私の姿はウサギの着ぐるみにしか見えないはずである。私が二十七歳の女、という情報も相手には一切伝わらない仕様だ。
そして私にとって、相手もカメの着ぐるみを着ている人間にしか見えない。声も変えられているので男女も年齢もまったくわからないというわけだ。
今この人狼ゲームは、大きな局面を迎えている。
私も相手も、COした内容は霊能者。この“昼時間”に、村人は二人の霊能者のうちどちらが本物であるか決め打ちしなければならない。本物は私なので、相手のカメは偽霊能者の騙りであると私は知っている。が、村人達にはわからない。私はこれを、今から周囲の村人達を説得して、相手の偽霊能者を吊って貰わないといけないわけだ。
「予想通り、ですか。貴方はまるでこうなることがシナリオ通りだったとでも言いたげですね。盤面が見えている、人外だと白状したらいかがでしょうか?」
相手のカメはクスクス笑いながら言う。そして。
「まあいいでしょう。盛大に殴り合い、いきましょうか?」
「望むところだ!」
人狼ゲームの醍醐味たる殴り合い――盛大な論戦が、今幕を開けるのだ。
全ては生き残りというたった一つの椅子を取り合い、勝ち取るために。
***
汝は人狼なりや?そのルールは至ってシンプルなものである。今回は参加者十二名の村(12A猫配役)なので、それを元に軽く説明するものとする。
十二人が生きる一つの“村”に、人間の姿を模倣することのできる人狼が紛れ込んだ。人狼は夜になると正体を現し、村の人間を一人ずつ食い殺してしまう。そこで人々は昼に相談し、人狼とおぼしき人間を一人ずつ処刑していくことにするのだ。
人狼が誰なのか、村人は推理によって探り当てていくしかない。その推理を手助けしてくれる頼もしい“村陣営”の仲間が四人。
一人目が占い師。毎晩占うことによって、村人の一人が狼かそうでないか、を知ることができる。
二人目が霊能者。昼に処刑した人間が、狼かそうではないかを知ることができる。
三人目が、猫又。夜に狼に襲われて殺されると、襲った狼を一匹道連れにしてくれるのだ。ただし、昼の時間に村人によって処刑されてしまうと、その時点で生き残っている者を陣営問わずランダムに道連れにしてしまうので気をつけなければいけない。ゲームは、狼と村人の数が同数になると村人の負けとなってしまうからだ。
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