師が駆け回る紅白戦

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肩の力を抜いた僕は椅子から立ち上がると、何人かとハイタッチをしながら人垣を離れ、小さな喫煙スペースに足を向ける。 ウエストポーチからタバコを取り出して小さく息を吐いた所で、後ろから服のスソを引かれた。 振り返ると、そこにいたのはよく見知った顔。 このゲーセンで僕にとっての1番のライバルで、同時に僕の1番愛しい人。 「おつかれさま、ヤスヒト」 「ありがとうナグサ。今日、来れたんだ」 「ついさっきね……大会には出れなかったけど、このあとの紅白戦は出るつもり」 彼女は僕と一緒に喫煙スペースに入ってくると、片手にふたつ持っていた缶コーヒーを、ひとつ手渡してくれる。 僕には微糖を、彼女はブラックを。 買ってから数分立っていたのか、冷たい缶の表面はしっとりとしめっていた。
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