19人が本棚に入れています
本棚に追加
「タバコ、1本ちょうだい」
ナグサはそう言って、くたりと手首の力を抜いた手をこちらに向けて、タバコを要求してくる。
自分じゃ買わないし普段は吸わないくせに、ナグサは時折こうしてタバコを欲しがる。
これは彼女がちょっと不機嫌な証拠。
そんな時の彼女の拗ねた子供のような表情と、ちょっとクールぶった所作が、僕はたまらなく好きだった。
箱から1本取り出したタバコを彼女に手渡して、火をつけたオイルライターをゆっくりと彼女に向ける。
彼女は前歯で柔らかくタバコを挟みながら「ありがと」と言うと、決してタールの軽くはないそのタバコに火をつけて、ゆっくりと灰色の煙を吐いた。
最初のコメントを投稿しよう!