師が駆け回る紅白戦

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「はい、お水」 ぽへーっと椅子に座って、フリープレイの試合を眺めていたナグサに水を差し出す。 「ありがと、お金……」 「さっきのコーヒーでチャラでしょ」 ポケットを漁っていた彼女は「そっか」と呟いて、指先で一度ペットボトルに触れるけれど、すぐに手を引っ込めて袖を伸ばし、ソレを受け取った。 ゲームをする前に、あまり指を冷やしたくないらしい。 「ヤスヒト、向こうに混ざらなくていいの?」 少しして、水を飲んで地に足の着いた声音に戻ったナグサが、隣に座って同じように試合を眺めていた僕の服の袖を軽く引いた。 首を傾げて僕の顔を覗き込む彼女は、心底不思議そうな表情。 「それって彼女が彼氏に言う言葉?」 僕も彼女と同じように不思議そうな顔をして首を傾げてみると、彼女は小さく頬を緩めて笑ってくれた。 単純だけど、それだけでも結構うれしいモノだ。
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