混沌の渦

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世の中が混沌としている。 聞き慣れないウイルスのせいだと言う。 世の中から、マスクが買えないと言う悲鳴が聞こえる。 だから俺は、マスクを製造するありとあらゆる会社を、すべて買い取った。 社員の安全を考慮しつつ、安定した数量を生産できるように稼働している。 今度は、消毒用のアルコールが無いという。 だから俺は、それを製造するあらゆる会社を買い取った。 これも従業員の安全を第一にしつつ、安定した数量を生産できるようにした。 これで一般的な家庭における必要な生活品は、 我が社のものになった。 世界中に広まるこの日用品2点だけでも、 全てが我が社の製品となったのだ。 これで売り上げはうなぎのぼりだって? そんなことに興味はない。 なぜなら、資産家であるわたしには、 会社が大きくなろうが、利益が増えようが関係ない。 最大限に作らせたこの商品を、 少なくとも混沌が鎮まるまでの間、 各行政と連携し、無償で提供することにした。 どんな人にも、平等に行き渡るように。 そして、この状況がいち早く終息するように。 そう、わたしの命がそのウイルスで尽きる前に。 混沌によって起こるくだらない争いで人類が終息しないために、 わたしが命を賭した、最大の買い物だ。
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