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そう冷やかして笑うと、イグナティオは与一を背中に背負って貧困区の奥へと進んでいく。ファルシールも馬を降りて歩いた。連れていた馬は通りを抜けられないので、外の道に留め置いた。
狭い場所に詰め込むように身を寄せあって眠る者たちや、ファルシールたちを虚ろな目で追う者、何かの肉を肉切り包丁で叩ききって捌いている者。
それらは余所者であるファルシールたちをその異様さで洗礼した。
「......!」
ファルシールは突然寝転がっていた者に足首を掴まれて、思わず足を飛び退けた。
様子を尻目に見ていたイグナティオは、ファルシールの戸惑う様を楽しんでいた。
少ししてようやくイグナティオは止まった。そこには、小ぢんまりとはしていたが、周りの建物よりかは随分と立派に見える小屋が建っていた。
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