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「この子の事はわたしが責任を持って看病するわ。安心して!」
オトコオンナは片目を瞑って不安げなファルシールを宥めた。なんとも言えない寒気がファルシールの背中を走る。
だが、見かけによらずオトコオンナの手際は見事なものだった。汗と返り血が生乾きになった与一の服を素早く脱がせると、新しい服を着せて毛布を掛け、額に井戸水で濡らして冷やした布を載せた。
その後すぐ「薬を煎じてくるわ~」と言い残して応接間を去っていった。
ファルシールは丸椅子に掛けて頬杖を突いているイグナティオと実質二人きりになった。話すことのないふたりは自然と無口になる。
「......此度の仕事、大義であった」
先に口を開いたファルシールは、そうひとこと賞しておいてイグナティオの出方を窺った。
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