第一章 Ⅲ節 イーディディイールにて

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「礼には及びません。契約ですから」  イグナティオは相変わらずのわざとらしい笑みをファルシールに向けた。 「そなた、余を囲って何をするつもりだ?」 「今はまだ機ではございませんので、後ほど」 「こちらも礼と言い報酬と言い、用意せねばならぬのでな。あまりに余の予想を超えられては、すぐには受け取れぬやも知れぬぞ」 「そうですな......。ではご厚意に賜り、僭越ながら」  イグナティオは右手を出した。 「まずあのキースヴァルトの馬を全て」 「まず、か」 「はい。次に、今後も私めとお取引して頂けるお約束を」 「良いだろう」 「加えて、あなた様の持つ情報と伝手(つて)の全て」
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