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「礼には及びません。契約ですから」
イグナティオは相変わらずのわざとらしい笑みをファルシールに向けた。
「そなた、余を囲って何をするつもりだ?」
「今はまだ機ではございませんので、後ほど」
「こちらも礼と言い報酬と言い、用意せねばならぬのでな。あまりに余の予想を超えられては、すぐには受け取れぬやも知れぬぞ」
「そうですな......。ではご厚意に賜り、僭越ながら」
イグナティオは右手を出した。
「まずあのキースヴァルトの馬を全て」
「まず、か」
「はい。次に、今後も私めとお取引して頂けるお約束を」
「良いだろう」
「加えて、あなた様の持つ情報と伝手の全て」
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