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アジアでは
イスラム教徒の国
アッバース朝が勢力を広げて
ヨーロッパにも攻め込んできていたの。
南ヨーロッパの国は、それぞれ
十字軍を組んでイスラム教徒と戦っていました。
でも十字軍に参加できるのは
王の勅令を受けた騎士階級だけ。
信仰心に燃える田舎の修道士たちも
カトリック教会のために何かしたかったけど
何もできなかったのね。
それで王にお願いして資金を募り
自発的に海を越え、イスラム教徒の国に行った
そのために出来た修道会がヴィトー会」
「じゃあ、坊さんの戦闘組織ってこと?
僧兵的な?」
「ううん、それが違うの。
修道士たちは戦う気ななくて
武器は何も持っていませんでした。
ただイスラムの地に乗り込み
捕まっている十字軍の捕虜や
攫われたカトリック教徒の女、子供の
身代わりの奴隷になるのが目的だったの。
1人の坊さんが身代わり奴隷になって
1人の捕虜や奴隷を解放してもらう
そういう活動をしたのがヴィトー会なのよ」
「ヤバイ、自爆テロ?」
「違う、相手を傷つけないもの。
これはイスラム側の記録にも残ってて
フランスやスペインから
痩せ細った坊さんが大挙してやってきて
奴隷の身代わりになると言い張り
祈ったり断食して、全く困った、と
という記述があるらしいの」
「そりゃ困るでしょう
攫ってきたカトリック教徒の娘なら
奴隷市場で高く売れるのに
髭ぼうぼうの《ザビエル》が大量に来て
身代わりになるって言われても」
リアンは目を煌めかせて
もっと、そんな話をして欲しそうにチカを見た。
「で、この学校では
幼稚園の時からそれを教わるの?
つまり人のために命を捨てろ、と?」
「そうしろとは言われないけど
《愛の行い》とはそういうことだって
教わったわね」
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