8人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「5時間目、化学室だよね」
「なんで知ってるの?」
「知ってるよリアンの時間割。
5時間目が移動教室の時だけ誘ってる
遅れても、目立たないから」
「そうだったの?
じゃ夏樹も移動教室?」
「うん、三号館で合唱練習」
「…でももう、行かなくちゃ」
リアンは時計を見て起き上がりネクタイを締めた。
乱れた長い三つ編みを解き
櫛で梳かしてから
手際よく根本から編みなおす。
三つ編みが綺麗に出来上がると
櫛に絡んだ髪を丁寧に取って
左の人差し指の先に巻きつけた。
象牙細工みたいな
先細りの指先から外すと
リアンの髪は小さな輪っかになっていた。
「それ、ちょうだい」
リアンはクスクス笑いながら
夏樹の小指に指輪のように嵌めてやった。
「塾、続いてる?」
「…もう行きたくない」
「そっか、やっぱり一回きちんと
お父さんに話してみたら?」
最初のコメントを投稿しよう!