Karte Ⅱ

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さっき、散々恋愛ができないだの告白されないだの語っておいてなんだけどね、実は私は人を好きになった事がない。 それも私に彼氏という存在が一度もできない原因だという事は自覚している。 非現実的な恋愛の物語ばかり読んでいたせいなのかなぁ、はたまたただ単に恋する心が死んでいるのかなぁ。 どちらにせよ、周りのお友達が彼氏ができたとか、処女を捨てたとか、そんな話をしてくる度にどんどん置いていかれちゃっているような気がして不安になるの。 焦燥感に駆られるけれど、やっぱり誰も好きにはなれなくて…。 何でも知ってるグーグル先生に尋ねた事もあったけれど、返ってきた返事は「おすすめの心療内科」のURLだった。 「はぁ…。」 食卓に並んでいる朝食は、美味しそうに湯気を立たせている。 ママが焼いたアップルパイの甘いシナモンの香りが鼻孔を掠めれば、ぐーっと鳴ったお腹が空腹を訴えた。 「もう林檎ったら、毎朝重たい溜め息ばかりなんだから。」 パパはもうお仕事へ行ってしまったのだろう、エプロンを着けたママが私にココアを渡しながら困ったように眉を下げる。 そりゃあ溜め息だって吐きたくなるよ。 溜め息くらい許してよ。
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