君影草

3/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
先生は私が今日ここに来た理由くらい察してるくせに、その話をしたくないのか私を焦らす。 だから、私の方から答えを催促した。 「先生。私もう卒業します。だから答えをください。私を愛せないその理由を」 懇願するように膝を落とした。視界が少しだけ歪む。 「先生…」 掠れた惨めな声は校舎に吸い込まれていく。 私にとってその言葉を発するのは勇気がいる事だったんだ。 数日前の出来事を反芻する。 揺れるアイボリーのカーテンが先生を隠したその瞬間に、私が零した言葉。 ずっと言いたくて言えなかったこと。 「先生は今、誰を見ていますか。私先生のことが好きです」 はやく、はやく私の告白の答えが欲しい。 答えはなんとなく予想が着いている。それは教師という立場を利用したものだろう。 私はそんな答え求めてない。今更そんな壁は通用しない。 先生はいつも私を通して誰かを見る。うつろな瞳に映る私じゃない誰か。 きっとそれが本当の答え。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!