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レース
凍てつくレース会場。サンドラのバンドメンバーのピックアップトラックに単車を積んで運んだ。一時間以上ノアの単車は外気に触れていたことになる。
多方面からわざわざレースに出向いてくるのは、違法な路上レースは野蛮という認識が定着し、走れる所がないから。シティから参戦のノアらもかつてはレース会場をいくつか選べたが、都会に近い走り屋程、場を失い、もうこの山しかなくなっている。
都会と田舎の間。
この山を境に人口密度が変わり、風景も一変する 。
五年前、山の近くにバイパスが開通したので山道を利用する人はいなくなった。限られたレース会場として中難度の起伏あるレース会場としてたまに利用される。
山道の出入り口である広場に続々とレース参加者が集まる。灯が乏しい環境なので各々の乗り物のヘッドライトを付けて明かりを提供する。馴染みの定着メンバーに加え、新参者でありながら場慣れしていて、物怖じせず談笑するおっさん連中が混じっている。
野蛮と違う、親睦会の雰囲気。レース参加者の八割は良心的な人種で、レースで絶対に人に迷惑をかけないという共通意識がある。自慢の愛車を飛ばしたいという性に従ってしまう、わかっているけどやめられないだけ。
主催する若いライダーらは絶対に一般人に迷惑をかけないレース開催に細心の注意を配りながら参加者の欲を満たしてやりたいと思っている。
だが、法律が黙っていない、通報されれば警察が動きレースは中止、最悪逮捕者もでる。時間との戦いでもある。
「おっせーなダイ。連絡取れたか?」
「駄目。どうしちゃったかな」
「仕事が長引いているのね」
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