国道一号線

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 まず、長距離バスにもかかわらず、座席が全て板張りだった。そして、三人掛けのスペースに四人、五人と無理矢理人を座らせていく。自然と人は押鮨のような密着状態になり、隣どうしで汗と息が混じり合う。小柄で鋼の尻と腰を持つベトナム人は一向に動じる様子もなく、ただ黙々と耐えているが、こちらはそういうわけにもいかず、時々モゾモゾと姿勢を変える度に、周りから無言のひんしゅくを買うはめになった。  外国人として三倍近い理不尽な運賃を支払っているのにこの始末だ。おまけに、座席の下のニワトリまでもが僕の動きに反応し、クックッケッ!と喉を鳴らしながら怒りをあらわにしていた。真下にいたなら踵で軽く蹴飛ばしてやるところだが、それにはやや距離がありすぎた。  バスの歩みは異様に遅い。理由は主に三つある。一つ目は道中で客を拾い過ぎること。二つ目は給水の問題。そして、三つ目は川に橋が無いことだ。
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