国道一号線

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 二つ目の問題は給水だ。現在はそれほどでもないだろうが、僕が旅した1994年当時ベトナムの長距離バスはラジエタの壊れたものが多く、殆どのバスが屋根の上にドラム缶を積み、そこにエンジン冷却用の水を入れて走っていた。当然それは垂れ流しのため、ドラム缶の水が無くなり次第バスを停めて給水することになる。そのため、延々と続く国道一号線の道沿いには、いたるところに専用の給水塔が立ち並んでいた。僕は他の国々でこういった方式のバスをついぞ見たことはなかったが、これも見ようによってはベトナム特有の立派な文化であったのかも知れない。  最後の橋の問題はベトナムの国際政治と深い関りがあるらしい。穴ぼこだらけの道もそうだが、もともと国道一号線の整備はベトナム人の悲願なのだ。流通経路の整備は国家と産業の発展には欠かせない。しかし、この頃はまだ隣国のカンボジアとはきな臭い関係が続いていた。軍事的な条件がそれを許さなかったのだ。
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