13人が本棚に入れています
本棚に追加
「青空とカレーライスに乾杯」
今日も昼前までごろごろスマホで動画を見ていた瀬波穂香。最近のお気に入りは蝶ネクタイに青ジャケットの少年がたちまち事件を解決するアニメ。彼かっこいいのよ、私は色黒の白キャップ青年も好きだけどね。
放送回数が多い分、見続けて気付けば夕方なんてこともしばしば。
開けた窓外からは暖かい風が流れてカーテンが柔らかな波を打っている。このまま眠ったら気持ちいいだろうと目を閉じようとすると、お腹の底から地獄のような低い音が鳴り響く。あら、私の胃腸は眠気よりも食い気ですか。これもいつも通り。
とはいっても冷蔵庫に入っているのはお水にお酒にお酒。残念だが胃腸を満足させるようなものはどこにも見当たらない。
家の冷蔵庫事情など気にしない私の胃腸はぐるぐるとさらに大きな音を立てる。ちょっと待ってて私の胃腸!
何かないものかと台所下収納をごそごそと漁っていると、中からレトルトのカレーが出てきた。「ビーフカレー 中辛」
冷凍庫を開けるとラップに包まれてカチコチになっているご飯がある。ああ、いつかの私をぎゅっと抱きしめてあげたい。よくぞ全部食べなかった私!
すっかり元気を取り戻した私はそのカチコチのご飯を一つ取り出してレンジに入れる。ヴォーンという音とともにカチコチご飯はゆるりくるりと回っていく。その合間に私は耐熱皿にレトルトカレーをびろーんと入れてレンジの前でツーステップを踏みながら待つ。ワンツー、ワンツー。
電子音が鳴り、カチコチのご飯は熱々ご飯に変身した。慎重に取り出してルーの入った皿を入れてスイッチオン。
一分少々待っている間に私は良いことを思い出した。窓の傍に駆けより、なびいているカーテンを端に寄せて部屋の中央にある小さなテーブルとクッションを窓のところに移動させる。そうしているうちにほら、ピーピーって音が聞こえる。取り出したお皿にご飯をひっくり返したら美味しい美味しいビーフカレーの出来上がり。
ベランダに足を延ばして見上げると空は雲一つない快晴。その大空を白い鳥が羽を広げて優雅に待っている。ああ、私もあんな風に飛べたらなー。
三度お腹が飯を食わせろと警告してくる。お待たせしたね、ではでは。
「いただきます」と合掌してからスプーンで一口。うん、中辛。
食べ続けていると次第に額と鼻に汗がたまり、大きめのシャツが体にぺたりと張り付く。
それでもスプーンを止めず食べ続ける。あちー、辛―い、あちー、でも美味い。
もう後三口というところまでで、私は冷蔵庫の中にビールがあることを思い出した。にやり。
私はホップステップジャンプで冷蔵庫に到達して中から缶ビール一本、ついでにもう一本取り出す。
帰りは歩いて窓に戻り、プルタブを開ければプシュッとはじける音が爽快。そのままごくごくと飲めば体の内から涼風が吹いてくる。
青空の広がる暑い日にカレーライス、汗をかいた後のビール、この上ない至福なり。
私の至福を祝ってくれているのか、スカイブルーのキャンバスに一直線の白い線が伸びていく。
私はカレーライスを平らげて、青空に向かって缶を掲げる。
「青空とカレーライスに乾杯!」
こんな瀬波穂香のある一日。
〜次回のヒント〜
とうとう外に出ます🚶♀️
最初のコメントを投稿しよう!