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「カーテンとグーグルマップ大先生」
瀬波穂香は起きるのが早い。休みの日でも六時には目が覚めてしまう。
その理由は本来、遮光を目的とするカーテンから朝日が燦燦と降り注いでくるからだ。一体誰がこんな意味のないカーテンを買ってきたんだ?
はい、私です。
でも私にだって言い分がある。この家に越した時ニトリに行って、店員さんに連れて行ってもらったのがカーテンコーナー。カラフルに彩られたカーテンがずらりと並んでいるのを見るだけで私の心はウキウキする。
店員さんとはここでお別れして、私はスキップしながら物色する。ピンク、グリーン、純白、色々見た結果私は紺色のカーテンを手に取った。
なんか無難って聞こえた気がするけど、失礼な! カーテンは遮光するもので無難か派手かは関係ない。しかも、女の子で紺色ってちょっとクール系に見えないかしら?
ビビッと来た私は紺色のカーテンと白のレースを手に取り、ルンルンとレジへ持っていった。
ところが、有頂天で家に着いてさっそくカーテンを取り付けた私は首を傾げた。
「これ、透けてる?」
レースとカーテン、二枚あるはずなのに青空がしっかりと見えている。あー、今日もいい天気だな。その青空のおかげで透けていることなんてどうでもよくなった。
瀬波穂香はそんな人。
自然の目覚ましだー、とかなんとか言いながらタオルケットを抱きしめてあっちを向いたり、こっちを向いたりする。ふわふわのタオルケット気持ちいいー、離れたくないよー。
結局ベッドから起き上がったのは八時前。欠伸をしながら食パンをトースターに入れて、焼けるまでにお水を一杯。んー、美味い!昼はラムネ、夜はおビール、朝は一杯目の水がこの上なくおいしく感じる。
そうこうしているうちにパンの芳ばしいにおいが鼻孔をくすぐる。つまみを回して強制的にチーンと鳴らせる。
指先でつまみながらなんとかパンを皿に移す。それをテーブルへもっていき、パンを食べながらスマホを眺める。今日も朝から盛んなSNS。
パンの粉をぽろぽろとこぼしながらふと「最近どこにも行っていないなー」と思い、徐にグーグルマップを開く。グーグルマップ大先生は私の相棒であり、親友。つまりは大事なもの。
グーグルマップで国内外の気になった場所を検索しては「行きたいなー」「お金ないな」など呟く。それでも旅行に行っているようで楽しくなる。
「ごちそうさまでした」と言って初めの挨拶をしていないことに気づき、慌てて「いただきました」と言い直す。
すぐに洗いものをしたくないのが瀬波穂香。皿をとりあえず流しに置いて、朝食を食べたばかりなのにチュッパチャップスを手に取る。味はストロベリー、甘くてとろける。私の目標はチュッパチャップスの花束を買って毎日一つずつ食べること。大人になってもあれは神々しくてなかなか手を出せない。
ころころと口で転がしながら再びベッドに寝ころんではマップ旅行を堪能する。北海道で海鮮丼食べたい、ガンジス川に入ってみたい、フライブルグでビール飲みたい、長野で日本酒の見たい、とりあえずお酒飲みたい。
多分こうして一日が終わると分かっていながらも動く気にはなれない。こういう日も大事だ、そうだよね?
足をパタパタと動かしながら妄想旅行を楽しむ。今度は現実的に行ってみよう。
いつになるのかしらと思いながらもその日を楽しみに地図をびゅんびゅん動かす。
そんな、瀬波穂香のいつもの一日。
〜次回のヒント〜
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