1人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな親友の姿を横目に、瑞樹は手早くピンクと赤のチューリップでブーケを作っていく。
「ところで毅。プロポーズだけど、記念日と合わせたりしないの? 付き合った日とか。同棲始めた日とか」
「今日だ。今日が付き合って五年目の記念日」
「だったら、もっと前もって準備しなよ! ほら、書き終わったならカードちょうだい!」
瑞樹は毅から書き終えたカードを受け取り、花に埋もれないように、カードをセットする。
「これでよし。できたよ」
「すごいな! さすが瑞樹! ありがとな!」
「いいから早く帰りなよ。彼女さん、待ってるんじゃないの?」
花束を紙でくるんで毅に渡しながら、瑞樹は時間を気にする。
「大丈夫だ。あと十分後に帰ってこいって、連絡きた」
「あぁ、そう」
「終わったら、連絡するな!」
瑞樹に背を向けて歩き出そうとした毅は、ふと何かに気づいたように動きを止めた。それに瑞樹は首を傾げる。
「この花……」
「紫のアネモネだけど、それがどうしたの?」
「意味は?」
「『あなたを信じて待つ』だよ」
「そっか! ありがとな!」
何かに納得したように毅は笑って、意気揚々と店を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!