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あんなに泣いたのにまた鼻の奥がツンとする。これ以上考えたくない……。
洸太はぎゅっと目を閉じて眠ることに集中した。
また夢を見ている。
母親が自転車の後ろに乗るように僕を促す。
それに乗ってはいけない。
ダメだと言おうと思っても、夢の中の僕は促されるまま自転車の後ろに跨って乗ってしまった。
駄目だ……。
お母さん、自転車は……。
衝撃と…真っ赤に染る地面。
僕のせいで………。
これは夢だ。
早く起きなければ……。
洸太は悪夢の中から、無理矢理自分の意識を引き上げた。
ゆっくりと目を開けると、自分の顔を見つめていた宗佑と目が合う。
「お父さん……起きてたの?」
「さっき起きた。………昨夜はゆっくり眠れて驚いている」
「良かった…」
宗佑はぎゅっと洸太を抱きしめると額にキスを落とした。
洸太は黙ってそれを受け入れる。
それにしても、付き添い用の狭いベッドで二人で寝ていたのだ。巡視に来た看護師も、仲のよすぎる親子に驚いたことだろう。
「お父さん、今日は仕事は?」
「午前中は休めるよう段取りをつけてある。退院手続きをして家にお前を送ったら、仕事に行くつもりだ」
「今日は学校に行ったら駄目?」
「今日一日くらい家でゆっくりしろ」
洸太は素直に「はい」と頷いた。
良く考えれば学校に行ったら春斗に会う。秋斗は自分に振られた件を、春斗に話しているかもしれない。
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