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こんな時間にウロウロしていたらすれ違う人に変に思われるだろうかと思ったが、誰にも会うことなく懐かしい公園まで辿り着く。
住宅街の奥にある高台の公演は、見晴らしがよく気分がいい。
家の中で悶々と答えの見えない悩みに頭を痛めているより、やはり外に出て良かったなと洸太は思った。
天気が悪いからか公園に人気はなく、洸太の貸し切り状態だ。
子供の頃はこの公園はもっと大きい気がしたのだが……。
ブランコに腰掛けてゆっくりと漕ぎ始めた。
前に進んでは戻る、その繰り返しに暫く身を任せる。
ブランコとか滑り台とか、懐かしい。
昔は夢中になって遊んだっけ。
夕方になればお母さんが迎えに来てくれて、手を繋いで家に帰ったな。
もう母親が迎えに来るはずないのに、洸太は公園の入り口をふと見た。
『洸ちゃん、おうちに帰ろうね』
お母さんと繋いだ手はいつも温かだった。
昨日繋いだお父さんの手は冷たかったな…。
もう、あの頃には戻れない。
お母さんは今の僕を見たらガッカリするだろう。
ブランコから降りると、頬にぽつりと雨粒が落ちてきた。
もう帰った方が良さそうだ。
洸太は家に向けて歩き始めた。
ぽつぽつと降り始めた雨は一気にざっと強くなり、急いでもどうせ濡れているからいいやと洸太はのんぴり雨に打たれながら歩く。
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