第6話

16/26
1024人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
僕のやることはいつもこうだ。 この前叔母の家の近所で迷子になった時もそう。 思いつきで行動すれば、大概こうして痛い目に遭う。 びしょ濡れになりながら、洸太は自分の運の悪さと思慮の浅さを恨んだ。 あと少しで家に着くというところで、洸太を呼ぶ声がした。 「洸太!そんなずぶ濡れになってどうしたの?」 「アキちゃん………」 後ろから秋斗の車が近付いていたなど気付いていなかったので、突然名前を呼ばれて洸太は驚いた。 「散歩してたら雨が降ってきちゃって…。アキちゃんこそ仕事終わるの早くない?」 「今日は出張で直帰だったんだよ。ほら、乗って」 「アキちゃんの車が濡れちゃうから……」 車に乗るよう促されたが、こんなにびしょ濡れの状態ではシートを汚してしまう。 洸太が尻込みしていると、運転席から秋斗が降りてきて強引に洸太を助手席に押し込んだ。 「車なんて濡れたっていいよ。洸太は風邪を引きやすいんだから、すぐ帰って温まらないと………」 僕は昨日アキちゃんの告白を断ったのに。 アキちゃんは相変わらず僕に優しい。 「アキちゃん……ごめんね」 「車のこと?そんなの気にしないで」 車のことだけじゃない。 告白のことも。 ずっと嘘ついてることも。 「本当に、ごめんなさい」 「とりあえず家においで。風呂はいってる間に温かいもの用意するから。話したいこともあるし………」 話したいことって何だろう? 洸太は小さく頷いた。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!