第6話

19/26

1024人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「綺麗なままじゃないって………」 「男の人に、されたことが、あるの。一回だけとかじゃなくて、何回も……何回も……」 涙と一緒に言葉はもう止まらなかった。 こんなことを言えば嫌われると分かっている。 でも、何も知らない振りをして狡く立ち回るなど洸太にはできない。 秋斗を騙して付き合おうなどとは思えなかった。 「誰に……誰にやられたんだ……。洸太が望んでそんなことをした訳じゃないんだろう?」 「相手は言えない…。望んでなんかなかったよ。嫌で……嫌で仕方なかったけど……。無理矢理……」 肩を震わせて泣きじゃくる洸太を秋斗はぎゅっと抱き締めた。 洸太が何か抱えているような気はしていたが……そんなことがあったなど知らなかった。 だって洸太はいつも笑っていたではないか。 「俺の……知ってる奴か?」 「言えない……。言いたくない。聞かないで…」 相手の男が誰なのか、洸太から聞き出すのは無理のようだ。 洸太の父親はこの件を知っているのだろうか。 「僕、きたないから、アキちゃんに、好きって言われる、資格ない…」 洸太が号泣しながら、切れ切れに発する言葉が痛々しい。 自分のことを汚いなどと思って洸太が生きてきたなど、全然知らなかった。隣に住んでずっと洸太のことを見てきたのに……。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1024人が本棚に入れています
本棚に追加