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その病院は郊外の緑に囲まれた場所にあった。
宗佑は状態が少し落ち着いたとのことで、恵美子の診療所からほど近いこの病院に先月から転院してきている。
今日は半年ぶりに、秋斗に付き添われ洸太は父親との面会を控えて緊張していた。
「深澤さん、お久しぶり。洸太がお世話になって……ありがとうございます。洸太、元気そうで良かったわ」
「叔母さん……。お父さんは……」
「宗佑は多分貴方のことは分からないと思う。私のことはお母さんと呼んでくるけれど気にしないで……」
洸太はこくりと頷いた。
緊張する洸太の手を、秋斗の大きな手が優しく包み込む。
「洸太、俺も居るから。辛かったら途中で帰ろう」
「うん……」
「以前の宗佑じゃないから戸惑うかもしれないけれど……。行きましょうか」
ずっと何かしらの理由をつけて、洸太は宗佑に会うことから逃げていた。
会ってしまったら、また宗佑の言いなりになるのではないかと思うと、どうしても会う気がせず……。
だが、秋斗から対峙してきちんと気持ちの整理をつけた方がいいと言われて、ついに今日重い腰を上げて宗佑に会いに来たのだ。
お父さんとちゃんと会って……もう、あの頃みたいに支配されないって確信したい。
お父さんから……もう自由になりたい。
アキちゃんとの未来のためにも…。
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