第9話

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「…………ショックだった?親父さんが洸太のこと覚えてなくて………」 「ううん。覚えてなくて良かったと思う。お父さんも僕も………お互いにやっと自由になれたんだよ」 帰りの車の中で、洸太はそう言うとにっこりと笑った。 自分達親子にとって、この結末がおそらく最善のものだったのだ。 あのままでは、お互いが鎖に繋がれたまま僕にもお父さんにも未来がなかった。 「洸太……。洸太には俺が居るから」 「うん。アキちゃん、ありがとう。今日、会いに行って良かった。吹っ切れたよ」 父親とのことを吹っ切った洸太は、心からの笑顔を見せた。 これで、前を向いて歩いて行ける。 父親とのことは過去のことだ。 父親が自分とのことをリセットして完全に忘れているのに、自分だけがいつまでも引き摺るなんておかしい。 過去は変えられないけれど、これからは秋斗と幸せに生きていきたいと洸太は思った。 「アキちゃん、これからも……ずっと僕と一緒に居てください」 「うん。ずっと一緒に居ようね。一緒に幸せになろう」 もう迷わない。 僕はアキちゃんと幸せになるんだ。 お母さん、見守っててね………。 秋斗の運転する車は家に向かう。 洸太の家は秋斗の家だ。 これからもずっと、僕はアキちゃんの家に帰るんだ……。
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