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第10話
秋斗と春斗の家で、洸太は本当に幸せに毎日を過ごした。
時々宗佑にも会いに行って、絵を見せてもらったり少し話をして過ごした。宗佑は洸太のことを友達だと思っており、いつも面会に行くと嬉しそうに迎えてくれた。
最初こそ複雑な気持ちだったが、楽しそうな宗佑の様子を見るとこんな関係もありなのかなと今は思える。
そんな宗佑も、もうすぐ退院して恵美子と同居する予定だ。
宗佑が嫌っていた実家の診療所は畳んで、恵美子は現在宗佑の入院する病院に勤務している。
二人の新居は病院の近くになる。
今後はそこに時々宗佑の顔を見に行くつもりだ。
春斗は麻美と正式に付き合い始め、しょっちゅう喧嘩をしているがそれなりに仲良くやっているようだ。
それぞれに少しずつ変化が訪れていた。
「洸太、春斗、卒業おめでとう」
卒業式の日、秋斗は休みを取って卒業式に出席してくれた。
卒業後、春斗は麻美と同じ大学に進学を決めており、洸太は調理師の専門学校に進路が決まっている。
洸太は卒業したらすぐに就職するつもりだったが、家事をするうちに料理が好きになり、本格的に料理の仕事に就きたいと、専門学校への進学を決めたのだ。
「兄貴、俺、これから打ち上げ行くから今日は帰らないから」
「分かった。洸太は行かなくてもいいの?」
「僕は行かないよ。アキちゃんと一緒に居たいもん」
春斗はニヤニヤ笑うと「じゃあ、今夜はお二人でごゆっくり……」と言って、校門で待っていた麻美の方に歩いて行った。
卒業までは繋がらない。
その約束は、今日の卒業式まで律儀にきちんと守られた。
つまり、卒業式を迎えた今日、初めて体を重ねる約束をしているのだが………。
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