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……まあ、弟扱いとして優しさなのだけど。
それでも僕は構わなかった。
アキちゃんのことは大好きだけど、こうして話したり頭を撫でてもらうだけで十分だ。
これ以上、アキちゃんに何かを望んだりしてはいけない。
「じゃあ俺は仕事に行ってくるよ。ハルもそろそろ出て来ると思うから」
「うん。アキちゃん、行ってらっしゃい」
にこにこしながら手を振る洸太に、秋斗も笑顔で手を振ると出勤のために車に乗り込んだ。
朝の短いやり取り。
ここ数年の日課だ。
洸太は秋斗に朝会うために少し早く家を出ている。ほんの少ししか会えなくても、この時間が洸太には大切だった。
「洸太、おはよ」
「あ、春斗。おはよ」
秋斗の車が見えなくなった頃、秋斗の弟で洸太の同級生でもある春斗が眠そうな顔をして家から出てきた。
兄の秋斗は知的な雰囲気のイケメンだが、弟の春斗は野球部のエースとして学校でも人気のあるスポーツ万能のイケメンだ。
幼い頃から、隣家のイケメン兄弟と仲がいいのは洸太の自慢でもあった。
二人と一緒に居ると、女子達から羨望の眼差しで見られたものだ。
「月曜日は朝練が休みだから、ゆっくり寝られていいわ」
「今年は甲子園行けそう?」
「簡単に言うなよなぁ。県大会に出るのがまず目標なんだからさ」
春斗はそう言いながら、鞄から紙袋を取り出すと「ほい」と洸太に渡す。
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