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結婚式
真っ白なチャペルで誓いのキスをする新郎新婦。そんな幸せそうな2人を見るのは高校2年生になる春ではなくて、もっと遠い未来のことになると思っていた。それなのに、なぜか俺は今、結婚式の親族席のに座っている。
「なあ。ゆり」
「何?」
隣にいる深い青色のドレスを着た大人びた雰囲気の少女に俺は話しかけた。いつも腰まである黒髪をひとつにまとめ、うなじが見えているせいもあって、なんだかどきどきする。
「なんで俺たち結婚式に出てるんだ?」
彼女の名前は波多野ゆり。俺の幼なじみで同じ高校の2年生だ。端から見ると、仲は悪くないが、よくもないというところだろうか。実をいうと、俺はゆりのことが好きなのだけど。
「私のお父さんとつかさのお母さんが結婚したから……でしょ?」
整った目鼻立ちで表情1つ変えず、ゆりが俺の問いに答える。
「はあ……やっぱ現実なのか。これ」
「現実よ」
「じゃあ、俺たち同居……?」
「そう……なるわね」
俺がうろたえても、ゆりの顔色はやっぱり変わらない。同い年の男と同居することになるというのに、肝の据わった女だ。俺は大好きなゆりと同じ家で過ごせることが実は嬉しくて舞い上がっているというのに。
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