同居

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同居

 同居生活1日目の朝。引っ越しの片づけが真夜中にすんで、深い眠りについていた俺の枕元で凛とした女の声がした。 「おはよう。つかさ」  大慌てで飛び起きると、そばにゆりが座っていた。 「……な、なんで、そこにいるんだ!?」 「いや……リビングに居づらくて」 「どういうことだ?」  ゆりにそう言われて、半信半疑でリビングに下りてみると、 「はい。聡さん。あ~ん」 「千佐子さん。今日も君のご飯は最高だよ」 「やだ。聡さんったら」  俺たちのことなんかきれいに忘れているであろう両親が朝からバカップルっぷりを見せつけていた。 「……えっと……」 「どうしたらいいんだ? 俺ら」 「そうね……」  ゆりの父親である聡と俺の母親である千佐子は、結婚式は挙げたけど、俺たちが高校を卒業するまでは籍を入れるつもりはないらしい。ゆりの母親は交通事故死、俺の父親は病死しているので、全然問題はないけど、やっぱりなんともいえない違和感はある。 「あら。起きていたのね。2人とも」 「す、すみません!! その、覗き見をするつもりでは……」  母さんに言われて、ゆりがパニックになる。学校ではクールビューティと名高い彼女が顔を赤くして、おろおろしているのを見られるのは俺の専売特許だと思う。 「まあまあ。座って。座って」 「はあ……」  一方の聡さんは何を思ったのか俺にいすを勧めてきた。そして、 「じゃあ、父さんと母さんは仕事に行ってくるから」 「そこにスプーンとヨーグルトがあるからやってみてね」  スプーンとヨーグルトを机の上に置くと、いそいそと仕事に出かけてしまった。 「あの人たち、気は確かなのか?」 「確か……だとは思うけど……」  恋人でもない俺たちに今朝のアレをやってみろというのか。浮かれているにもほどがある。俺たちは、その場に取り残され、ただただ呆れかえっていた。
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