美人

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美人

「距離感が微妙……」 「まあ……気にするな」  学校でも指折りの美人であるゆりと同居している……だなんて、周りにばれたら、男どもにぼっこぼこにされる。そう思った俺は、ゆりと微妙に距離を空けながら、高校へと向かった。俺たちの家から藤川高校までは電車でひと駅だ。そこから歩いて15分。周りは閑静な住宅街で、登校時間には藤川高校の高校生しか通らない。ちなみに、藤川高校はこの地域では1番の進学校で文武両道を掲げている。 「おはよう。つかさ」 「おはよう。健太」  新川健太は俺の中学時代からの同級生だ。もちろん同じ中学校だったゆりのことも知っている。 「あれ? 波多野さんも一緒なの?」 「あ……うん……近所だからね」  よく言うぜ。俺と母さんが波多野家に住む前は同じ学校でも家の場所は正反対だったのに。でも、ばれなくてすんだから助かった。 「いいなあ。こんな美人と一緒に登校できて」 「お、おう……まあな……」  俺はバカ正直だから、ごまかせない。舞い上がっているのを隠し切れずに、素直に答えてしまった。それを聞いたゆりは、 「じゃ、じゃあ、私、先に行っているから」  ほんのり顔を赤くして、さっさと先に行ってしまった。 「あ。ごめん。俺、邪魔した?」 「いいよ……別に……」  いいんだぜ。浩太。照れているかわいいゆりを見ることができたから。
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