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放課後
放課後。俺は今年も同じクラスになった健太と一緒に陸上部の部室にやってきた。ちなみに、ゆりも同じクラスだ。嬉しいけど、ちょっとやりにくい。
「学級委員は須崎くんと波多野さんか。美男美女だなあ」
「そうだな……」
着替えながら、健太が今日のホームルームで決まった学級委員の話をする。ゆりの相手方である須崎守は、サッカー部所属で文武両道の爽やかなイケメンである。ゆりのことを狙っているという噂もあり、正直、俺は面白くない。
「どうかしたの?」
「べ、別に!! そんなことより部活行くぞ!!」
不機嫌になったのを悟られないように俺は、外へ出て、とりあえず筋トレをし、グラウンドを適当に何周か走った。すると、遠目に花壇の手入れをしているゆりが見えてきた。
「お疲れ」
家でもいくらでも話せるのだけど、姿を見ると話しかけてみたくなる。俺は、休憩がてらにジュースを買い、花壇に近づいて、話しかけてみた。すると、
「わあ。び、びっくりした……」
ゆりが俺の方を振り向き、目をぱちくりさせた。艶やかな長い黒髪を1つに束ね、ジャージを着て、花の手入れに熱中していたらしい。
「また花壇の手入れしてるのか? ボランティアだろ?」
「うん。でも、草抜きしているとなんだか癒されるから」
「そ、そうか……」
可憐な見た目に反して、ゆりはこういう1人で黙々とできる作業が好きである。よって、男子にはモテるが、女子には変人扱いされることが多い。そんなゆりだけど、1名ほど友人がいる。
「市ヶ谷!! 私のゆりにナンパしないでくれる?」
ゆりと一緒にしゃがみこんでいると、きんきんと頭に響く声が聞こえてきた。中学時代から茶髪のツインテールを貫き通している松沢くるみだ。茶髪は地毛らしく、悪い奴ではないのだけど、教師陣からはいつも目をつけられている。
「うるせえな!! ナンパじゃねえよ!!」
「はあ? だったら、何よ」
「な、なんでもねえ!! 俺は部活に戻る!!」
兄が3人いるだけあって、くるみは勝気で口やかましい。正直、俺は苦手なのだけど、なぜかゆりと仲がいいのだ。まだ喋りたかったけど、大人しく退散することにした。
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