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母の日
ゆりとのドキドキの同居生活が始まって1ヶ月が経った。相変わらず、俺とゆりの関係は、仲は悪くはないけど、よくもない幼なじみだ。
そんなある日の部活の帰り道。俺は花屋の前でぼうっと突っ立っているゆりがいることに気がついた。
「何してるんだ? ゆり」
「つ、つかさ……」
隣に立ってみると、店先にはカーネーションのブーケがずらりと並んでいた。よく考えたら来週の日曜日は母の日だ。
「そっか……もうこんな季節なんだな。今年も母さんにカーネーション買わなきゃな」
「今年も……っていうことは、毎年あげているの?」
「おう。そうだよ」
「意外ね……」
俺のカーネーションの話を聞いて、ゆりが呆気に取られている。どうやら、口が悪く、ふるまいもちゃらちゃらしているせいか俺は親不孝者に見えるらしい。本当は違うんだけどなと俺がちょっとむくれていると、
「……つかさが花をあげるんなら、私は別のものを千佐子さんにあげようかな」
とゆりが呟いた。
「やってくれるんだ。母の日」
「うん。千佐子さんには昔からお世話になっているから。でも、何がいいのかわからなくて。好きなものとか知ってる?」
「そうだな。俺、実は母さんにネックレスとかあげてみたいんだよな。アクセサリー集めるの、好きだから」
あうんの呼吸でとんとん拍子に話がまとまっていく。こういう時、ゆりって、やっぱり俺の幼なじみなんだなとしみじみ思う。
「じゃあさ、明日は日曜日だから、一緒に探しに行かない?」
「お、おう……じゃあ、そうしようか……」
こんなにスムーズに好きな女の子と2人で買い物に行く約束ができるなんて思いもしなかった。俺は嬉しくて、心の中で密かにガッツポーズをしたのだった。
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