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「絵里さん、亜由美さん、お疲れっす」  すぐにわたし達の元にやって来た洸太くんは、迷わず絵里の隣の椅子に腰かける。  ほら、やっぱり絵里の勘違いだ。わたしなら絶対に隣に座る。それに名前を呼んだ順番だって、絵里の方が先だったもの。  洸太くんは座るなり、手に持っていたピンクのパックジュースにストローを差し、チューチューと飲み始めた。いちごミルクだ。GLAYのJIROちゃん似の可愛い系男子は、飲み物も可愛らしい。 「洸太くん、もうテスト終わったの?」  なんとなく話しかけると、クイッと上目遣いでこちらを見た。やっぱり可愛い。 「いや、レポート出しに来ただけで。これから飯食って三限です」 「おっ、うちら仲間ー」  絵里がすかさずそう返す。はいはい、無計画人間はわたしだけですよ、とひとり口を尖らせた。 「あ、そんなことより! 洸太聞いてよ。亜由美が夏合宿行かないって言い出して」 「え、まじすか? 亜由美さん」 「あーうん。日程的にちょっとね」  そう答えれば、今度は洸太くんが拗ねたように口を尖らせる。 「えー、オレも行くのやめようかなー」  一瞬ドキッとしたものの、恐らく社交辞令だろうと笑って流す。そんなに都合よく恋は転がって来ない。あの再会が恋になっていないのが、なによりの証拠だ。 「残念だけど洸太、一年は全員強制参加だから。うちらも去年そうだったもんね?」 「そうそう」 「まじすか。あ、じゃあ亜由美さん。連絡先教えてくださいよ」 「へ?」  唐突過ぎて声が裏返った。どういう話の流れだろう。 「合宿はしょうがないから、別の暇な時に遊んでほしいなと」  なるほど。流れは理解したし、断る理由も特にない。それにしても急にグイグイ来る。ひょっとして、絵里の言う通りなのかしら。 「いいよ。えっとね、070の……」  さっそく番号を伝え、ワン切りしてもらおうとピッチを取り出して。目に入ったのは左上のメール着信のマーク。誰だろう。
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